東京の洗礼the痴漢

都内はやっぱり地元とは違うな、と僕が“東京の洗礼”ともいうべき衝撃的だった体験をしたのは、朝の満員電車でした。

本社が東京にあると、その周囲の関東圏の事務所は何かと東京の本社に呼び出されることがあります。
その日も都内の本社での打ち合わせというところで、速く出ていたものの、案の定電車は満員。
しかし、ただの満員電車ではないのです。
徐々に東京に近づくに連れて、乗車人数の増えていく、すし詰めの電車の中、僕に忍び寄る冷たい手のひらを股座に感じました。

そうです、痴漢です。
なぜ痴女じゃないと解ったかといえば、その手のひらが次の瞬間に、僕のペニスを握ったとき、関節の骨ばった感触と、指の太さ、握り締めた感触・・・明らかに男性的な“強さ”を感じたのです。

もちろん人生で始めの感覚に、僕は必死で体勢を変えて避けようとしました。
しかし、このひしめき合った車内で、自分が変に動いたら、かえって僕が不振がられて痴漢になってしまうと思い、あと4駅ということもあって、ここは耐えようと心に誓いました。
僕が動かないと解ったのか、最初の頃には、わずかに躊躇うようなおぼつかない動きをしてペニスのさおを握った手のひらが、強く、そしてゆっくりと上下にスライドしはじめたのです。
そして窮屈さを感じたのか、一旦ペニスを離した手のひらは、今度はチャックの方に宛がわれ、ゆっくりとジッパーを下ろし始めました。
ここまでくると、誰かに見られてしまうような気恥ずかしさが相まって、僕の方も恥ずかしさが増大してきました。

思わず顔を伏せたところで、手のひらはスッと消えました。
終点についたのです。
開かれるドアに背を向けた状態でつり革につかまっていた僕は、すぐにかばんで股間を隠し、下げられたジッパーを元に戻して、電車を降りました。
この電車は痴漢で有名な路線だったということをしったのは、僕に後輩が出来、彼が僕のように「痴漢に出会いました」という打ち明け話をした一年後に解ったことでした。

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